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MARUMASU Motorcycle Lounge.

2006 - 2021 Specializes in Harley-Davidson / Japanese Classics Maintenance & Speed Pro Shop " The Spirit of Bonneville Salt Flats" Land Speed Racing. / 2010/2011 FIM World Speed Record : 2011/2014 AMA National Champion : 2017 Fastest EV Motorcycle in Colorado Mile Race.

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"black parade 87 FXR project" 〜S&Sエンジンの進化。

本日はBPさんのS&S V111エンジンを通して感じた事を記事にしておきたいと思います。

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今回搭載したS&S V111エンジンはコンプリートエンジンでしたので、当然最初からアセンブリされています。
よってどのような設計思想で作られているのかであったり、個々の部品の形状などは外観からは全く分かりません。
そこを気にするようなショップさんはハーレーの世界では極端に少ないかと思いますが、内燃機関の作業を主に扱うお店ではそこが最も重要になります。

仕様やクリアランスによってはナラシのやり方は勿論の事、維持していく上でのオイル管理や乗り方でさえも違ってきてしまいます。一般的にはそこまで神経質に気にする必要も無いのですが、レース目的のエンジンや過激なスペックのチューンドエンジンでは乗り方や維持管理の良し悪しで下手をするとブローだって起こり得ます。

折角新調したりリビルトしたエンジンを少しでも長く良い状態で乗って頂く為にも、そこのアドバイスは組み手側が必ずオーナー様に伝えなければならない最重要事項だと考えます。
ですのでこうしてトップエンドだけだとしても、実際開けてチェック出来るという事は、組み手側にとっても、乗り手側にとっても大きなメリットがあると思います。


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まぁトップエンドを開けた最大の理由としては、相変わらずS&Sは灰色の紙みたいなガスケットを使用し続けているようで、当店開業当初からですからそれこそ10-15年位このガスケットの材質には悩まされ続けてきました。
色々液体ガスケットを併用し組むのですが、直ぐに漏れないにせよ経年でガスケットが潰れてしまい、結局ボルトが緩んだ、のと似た症状に陥り漏れます。

あとは、特にエボ用のS&Sエンジンキットなのですが、88ストローカーや96ストローカーの"サイドワインダーキット"かな、のんびりドコドコ乗る方にはお勧めですが、これでブチ回すとピストン形状の古さからフラッタリングを起こして異音が出てみたり、ピストンリングも古くてゴツい鋳造リングなので初期ナラシの際はとても気を遣います。
ロングセラーの商品ですので致し方ありませんが、じゃ良い材質のものにピストンを変える、とかリングは今時のものに変える、といった改良や進化が一切見えず、考え方が古過ぎるんじゃないかと個人的には思っていました。

その間にも沢山の内燃機部品を作るアフターメーカーが次々現れ、あっという間に消えてなくなったり(笑)、H-Dよりも遥かに素晴らしいクオリティと性能を叩き出すメーカーも現れて現在に至ります。

部品単体の材質や精度が低ければ、どんなに正確無比にエンジンを組み上げたとしても、その信頼度はとても低いものしか生まれません。しかし、じゃ自分でピストンをデザインして作る事が出来るのかと言えばそれも難しい訳です。

よって当店では様々な内燃機の作業経験値を踏まえ、自分が使ってみて信頼出来るものしかお客様にはお勧めしていませんでした。例えば"EdelBrock"だったり、"T-man Performance"だったり。
「S&Sの"SUPER STOCK"はスーパーな”だけ”の所詮ストック。」と冗談半分に揶揄したりしてましたが、今日このV111エンジンを開けてみてちょっと考え方は変わったかもしれません。


まず開けてみて良いなと思ったのはそのピストンデザインの良さ。今は自社で設計する事は少なくピストンメーカーに委託し開発して貰うのが一般的だと思います。ハーレーで言えばJEとかよりもWISECOが有名かもしれません。

スカート部分が短くピン上も適正、以前S&Sではピストンピンがオイルリング部分まで突き抜けているという、今考えても”あり得ない”馬鹿なデザインのピストンがありましたが、オイルを馬鹿喰いしてたので案の定廃止したんだと思います。現在最先端を突き進む自動車用のピストンに比べたら一世代前的ではありますが、それでも今日のトレンドはしっかり踏まえているかと思います。
ピストンリングもT-manなんかでも使っているとても薄いステンレス?かな、コーティングされた今時のリングになっています。

シリンダーを抜く際にリングの張力が分かるのですが(リングエンドギャップが標準的なH-Dと同じ、と仮定)重くもなく、特別軽くもなかったので、ナラシは比較的安易ですし、ナラシが終わってからでも、まぁ真夏の暑さ以外は特別神経質になる事もなく気楽に楽しめるエンジンになると思います。

あとフラットトップピストンはピストントップの熱の分散が一定ですので使い勝手が良いですし、コールドスポットも出来難いので異常燃焼も起こし辛い。圧縮比は9.5:1だったかな、排気量こそ111cu"もありますが、圧縮が低いお陰で十分街乗りでも使えるような気がします。あとはキャブレターのセッティングをあまり”詰め”ずに緩めにセットを行えば尚使い勝手が良いと思います。

あとはソリッドのプッシュロッドが良い。普通アジャスタブルを組み合わせがちですが、敢えてのソリッドです。ソリッドは調整ネジの部分が無いので軽くて屈強、調整ナットがプッシュロッドカバーに干渉して音鳴りする現象も皆無です。何よりプッシュロッドが軽いとタペットユニットがロッドを持ち上げる負荷も減る訳ですから、タペットの寿命が伸びるという事も多々考えられるかと思います。

加えてこのエンジンはエボの"クローン"ですが、ツインカムと同じピストンクーリングジェットを備えています。クーリングジェットは絶対にあった方が良いのでこれが標準装備されているだけでもS&Sケースをチョイスする十分な理由になるかと思います。あとS&Sクランクケースにはケースオイルドレンボルトが付いているのも有り難いです。

あとはシリンダーヘッドのバルブスプリングがビーハイブ型の1スプリングを使っている事も良いです。まぁカムのプロフィールが緩いから故チョイス出来るパーツですが、シングルビーハイブはクランキングが軽いのでエンジン始動の際もスターターの負荷を軽減出来ますし、ビーハイブはしなやかに動くのでバルブスプリング鳴りする事もほとんど無いと思います。

こうして書くと良いところばかりですが、唯一残念だったのは発電系がエボ準拠の32Aにしか対応していないところ。2フェーズ用の小判型のステーターコイル穴しか開いていないのでツインカムになってからの3フェーズにアップデートする事が出来ません。よってまず壊れないツインカム用のレギュレターに交換する事が出来ず、数年に一度はレギュを交換する必要があります。
あとは、ここまでしっかり作っているエンジンにも関わらず、何故に未だ古いガスケットなのか、という事くらい。笑
多分S&Sの本社に死ぬほどガスケットの在庫があるんでしょうかねぇ、、

因みにピストン〜シリンダーのクリアランスは鋳造ピストンで言えば大きめでしたが、多分鍛造ピストンなので適正値です。クリアランス次第でナラシの方法が変わるのは前記しましたが、これで正しい方法をお伝え出来るんじゃないかとは思います。欲を言えば安全牌を見てシリンダーのクロスハッチを”荒目”で入れ直すと、シリンダースリーブのオイル保持が上がって尚良いですよ。
見た目は”エボ”ですが、材質も構造もはっきり言って"ツインカム"と同等かそれ以上です。悪い訳はないですよね。

ま、個人的に「食わず嫌い」感のあったS&Sですが、こうして開けてみた事で信頼に足るものじゃないかという事が分かりました。あとはいつもの自分の組み方で組み直せば、バッチリなんじゃないかと思っています。

トップエンドを分解しただけですが、それでもこれだけの事が読み取れる訳ですから、やはり内燃機の世界は奥が深くて魅力が尽きません。今回も勉強になりました。

作業経過についてはblackparadeさんのVLOGが更新されるかと思いますので、そちらでチェックを宜しくです!

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