2020.06.29 Mon
'91y FXR シフトの不具合修理。

実際のところ他店様の作業に文句は言いたくないのですが、当店で仕事を任された以上現況をオーナー様に伝える義務が御座います。よって事実だけを淡々と記事にしていきたいと思います。

T/Mを作業する際マフラーを外すのですが、点火ユニットのハーネスとクラッチケーブルがマフラーに当たってしまっており、クラッチケーブルは皮膜が溶けてそこからT/Mオイルが漏れている状態でした。この辺りも組み付け時に対応します。

まずはT/Mトップカバーを開けます。

シフトが入り難かった為に無理しなければシフトチェンジ出来なかったと思います。よってニュートラルスイッチの接点もこの通りガタガタに削れてしまっています。通常はボール形状になっています。こんなのは初めて見ました。

シフタードラムを外す前にジャッキアップしてシフトの確認を行いましたが、やはりエンジンが始動していないと問題なくシフト操作が出来ました。

この時点で実はクラッチが怪しいのでは、と思い始めたのですが、取り敢えず熱で溶けたクラッチケーブルは交換する必要があった為、T/Mサイドカバーを外しました。


シフターフォークは絶対に確認しておきたかったので外しました。




各シフターフォークやギアのドックに強いアタリが見受けられますが、シフト出来なくなるような曲りや破損ではありません。シフターフォークは交換したいところでしたが、曲がりが無いので続投致します。

T/Mアセンブリーの組み方に特に問題は無いと判断し、疑うべきはクラッチユニットだと確信しました。で、もう一度1次ドライブを分解しチェックをします。


この車両にはVPクラッチと社外の強化クラッチプレートが組んでありました。クラッチハブのベアリングを交換する際、VPクラッチを組み込む時に留める純正のCリングが異常に組み難かった事に違和感を持っておりました。
実際、このように油圧プレスで強く押さないとCリングが外せない程クリアランスがありません。
しかし、オーナーさんはこの状態で乗っていた、という事も聞いていた為、疑う事なくそのまま組んでおりました。

ぱっと見た感じでは何処にも問題はないような気もする為、ストックのクラッチバスケットASSYと比べます。

クラッチとスチールプレートの合計値を計測。純正クラッチの場合がこちらで、

装着してあった社外クラッチがこちら。かなり厚みが違いますよね?これが今回シフト出来なくなった理由です。

こちらが純正クラッチでバスケットにセットしてみた状態。

こっちが社外で組んでみた状態。大雑把に言えばフリクションプレート一枚分近く厚くなっている事になります。勿論クラッチ、スチールプレートの枚数は同じです。

つまり、この年式のクラッチユニットの場合、ストックとほぼ同じ厚みのクラッチ板を使わずにVPクラッチを併用してしまうと、VPが押された状態(というのかな、、説明が難しいのです。)になってしまいます。
それでもVPを組み込んでいるので停止時はクラッチ操作は軽いので問題に気がつく事はありません。しかし、エンジンを始動すると、それだけで遠心力が働きますのでVPは押した状態になる為、シフトが抜けなくなるという訳です。
この年式以降のTC88のクラッチになってからは根本的な構造が違う為、VPと社外クラッチを組み合わせてもシムを使ってオフセット調整が出来るので多分問題は起きません。
VPを取り付けしたショップがこの事を知らずに組み付け、それ以後オーナーさんは非常に厄介な調整を逐一行わなければならなかったでしょうし、そもそもクラッチバスケットがグラグラに揺れていたお陰で、シフト出来ていた"だけ"だったと思います。
クラッチバスケット側のスプラインも傷んでしまっていた為、この際別の中古バスケット一式に交換しました。
クラッチプレートも純正に戻した上で、VPを装着して組み直しました。これで多分大丈夫な筈。

各部を組み直す前にやっておかなきゃならない事があります。マフラーに干渉していたIGユニットのハーネスを右側ステップの内側に通し直します。

何処も彼処も整備された形跡は微塵も無く、、なんでこんな適当な作業をするのか本当にハラワタが煮え繰り返る思いです。

ハーネスを通す位置を変える為にRブレーキペダルやオイルラインを外しました。序でに洗浄して各部グリスアップとロックタイト塗付。
因みに。今日当方が新たに触ったところ全て、ロックタイトは塗ってありませんでした。
"クズショップあるある"です。

クラッチケーブルはダメでしたので交換しました。ここも使えそうな中古を流用しています。

T/Mリカバリー完了。T/Mサイドカバーボルトは社外のメッキ品だった為、純正ボルトに交換しています。

マフラーはそもそもFXR用のサンダーヘッダーでは無いと思います。スペーサーカラーで5ミリ外側にオフセットさせ、なんとかクラッチケーブルに干渉しない位置で固定。念の為、マフラー、もしくはクラッチケーブルに耐熱バンテージを巻いておく事をお勧めします。

ここまで来たら動作を確認しておきたい、という事でT/Mオイルとプライマリーオイルを入れてエンジン始動。

今日のところは店内で動作確認したのみでしたが、シフトの操作感はバッチリ直りました。クラッチケーブルの調整ネジの張り具合も適正に戻っています。あとは実走でチェックするだけですが、多分リカバリー出来たと思います。
T/M入れ替えにならなくて本当に良かったと思います。

という訳で、明日晴れた場合、臨時営業となりますので宜しくです。
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