2019.10.27 Sun
'00y FXR4 ピストンの謎の解明。

走行には特に問題は無かったのですが、やはり気になるところがあります。

スパークプラグの焼け具合は少しマシになりました。

さて、ここからが本題。
走行してからオイルタンク内のエンジンオイルをチェックすると、熱でかなり柔らかくなっており、水のようにサラサラになっていました。通常油温が上がって油圧が低下すると、まずはタペット回りからのノイズが増大します。しかし今日のような涼しい日に、僅か数キロの走行距離であれば問題が出る筈ありません。
百歩譲って、組んだばかりのクリアランスが少ない状態だとエンジンは通常ヒートし易い訳ですが、一度ヒートサイクルを行ってから、その後の再始動でのみエンジンに違和感があるのは通常あまり起こりえません。
唯一考えられるのはピストン〜シリンダーのクリアランスの過小で、その場合、ピストンのカジリや棚落ち、最悪の場合焼き付きも考えられます。
今回、オーナー様に持ち込んで頂いたヘッド、シリンダー、ピストンはドイツから購入したリビルト品でした。エーデルブロックの商品は過去にエボ〜ツインカムまで多く取り扱いしており、個人的にも装着しておりますが、"RPMヘッド"では無く普通の"パフォーマーヘッド"に組み合わせるハイコンプピストンを見たことがありません。ワイセコ製、というのも摩訶不思議でして、実のところエーデルブロックヘッドは通常"エーデルブロック/JE"ピストンの組み合わせで使用します。
ワイセコ製で鍛造、もしくはセミ鍛造ピストンという事で調べたのですが一切資料は無く、よってクリアランスは鋳造ピストン使用時に近い、タイト目で組んでしまいました。それはドイツ人がホーニングとクロスハッチを行なったままのクリアランスです。
"抱き付き"を起こしたり、最悪"焼き付き"を起こさないとすれば、ピストンやピストンリングエンドは狭ければ狭いほどエンジンの気密性は上がり、ざっくり言えばパワーが出ます。しかし、気密性が高過ぎれば前記したようなトラブルが発生しますので「諸刃の剣」となってしまうのは皆様ご承知のとおりです。
このままピストンやリングが馴染んで、且つ熱膨張にも耐えるようならこのままでもOKなのですが、ピストンの膨張率が高い鍛造ピストンだとして、鉄製のシリンダースリーブよりもアルミ製のピストンが大きくなってしまった場合、当たり前ですが抱き付きます。
HSRキャブレターのジェッティングが少し外れていた事もありますが、加速ポンプの付いたキャブレターで、ハーレーで真っ白になるほどプラグが焼けるのは通常ありません。しかし、ピストン、シリンダーのクリアランスやリングエンドギャップが小さい場合、説明は面倒なので割愛しますが、リーンになる事があります。
上記を踏まえ、今なら特に問題が無いと思うので、一度シリンダーとピストンを外し、エーデルブロック/JEピストンのクリアランスまでボーリング+ホーニングを行おうかとも考えています。
というのも下記に示した資料のように、ワイセコ製、というのは間違いで、多分JE製だと思うんです。(JEオリジナルならピストン裏にJEのマークが入っていますが、他社専用ピストンの場合、メーカー名が入っていない事がほとんどです)パッケージは間違いなくワイセコでしたが、箱と中身が違っていたと思われます。画像は途切れてしまっておりますが、ピストンのポップアップ部分の形状は正に使用したものと同形状でした。


エーデルブロックのHPからは既に削除されておりましたが、フリーのサイトでようやく当時のカタログを見つけ出す事が出来ました。パフォーマーRPMヘッドにハイコンプピストンを組み合わせた場合のコンプレッションは10.5:1で、専用カムを組み合わせた場合、後軸100HP近く出ます。(2003年の資料)
ノーマルピストンとパフォマーヘッドの組み合わせでは9.5:1となり、当初は此方をオススメしていたのですが、偶々トップエンド全てを入手して頂いた為、折角なので組みましたが、ちょっとどうだろうかなぁ〜といったところです。
これから浜松のお客様のFXRに施工するエンジンは、パフォーマーヘッド+ストックピストンの組み合わせで組ませて頂きます。

エンジンをやり直すのも、そのまま行くのもオーナー様次第ですが、現時点では走れる状態ですので一度乗ってみて頂こうかと思っています。まずはオーナー様と相談して、今後の作業を進めたいと思います。
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