2019.02.28 Thu
スイングアーム製作の裏話。
7Nアルミ合金から削り出したブロックに、スイングアーム母材となっている角パイプを溶接しました。スイングアームのチェーンスライダーと母材の溶接箇所とまったく同じ構造のダミーとなります。

↓この部分ですね。

で、左右を異なるビートで溶接した後、真ん中で真っ二つに切断します。

切断した2つの部材を比べてみましょう。左側は細く綺麗なビートで溶接。右側は少しボテっとしておりますが、太く大きめのビートで溶接されています。

で、まずは細いビートの方から。表は美しく溶接されていますが、

内側を見てみると溶接の流れ込んだ量が少なく、材料を固定しておいてハンマーで叩くと溶接箇所から破断してしまいました。これでは強度が必要なスイングアームの溶接には不向きです。

次に太いビートの方です。

裏側までしっかり溶接は回っており、熱で母材毎溶着されています。この材料をどんなにハンマーで叩いても溶接箇所から外れる事はなく、母材自体が破壊するまで叩いても溶接自体に問題がありません。

なぜわざわざこのようなテストを行ったかと言うと、どんなにスイングアームが美しく溶接されていても、内部までしっかり流れ込んでなければ、いずれ溶接箇所から破断してしまいます。知っての通りスイングアームは非常に重い重量と大きな力を支える部分ですから絶対に壊れない強度が必要です。
溶接箇所を1箇所でも減らす為に手曲げに拘り、ビートの美しさは勿論ですが、必要強度が保てるビートの大きさにする、といったところまできめ細やかに注意を払い製作したものが今回満を持してリリースするスイングアームなんです。
また、当スイングアームは全てのモデル用において強固な治具を製作した上、組み上げられておりますが、組み上げ後の溶接の応力分散にも抜かりはない為(必要な最終加工を施してあります)溶接歪みが残っている、という事は皆無です。
溶接歪みが残っているような粗悪なスイングアームでも、ピポットシャフトやアクスルシャフトを少し叩き込めば入ってしまうので通常ほぼ気がつかないかと思います。しかし、当店オリジナルでは、応力分散を行ってから仕上げ加工を行う事で確実に歪みなくセンターが出るよう加工されております。





なお、このスイングアーム、7000番台という(Al-Zn-Mg系合金・Al-Zn-Mg-Cu系合金 高強度材でありCu系はアルミ合金中の最高強度である)高強度なアルミ合金を使っております。
7075 超々ジュラルミン 用途:航空機など
7N01 鉄道車両用構造材など(アルミニウム合金製の鉄道車両)
しかし、この7N01、一度熱を入れると、もともとの硬度に戻るまでに3〜4週間程度の時間がかかります。その為メーカーのワークスチームではフレームやスイングアームを窯入れしたり、逆に冷却を行ったりといった作業を繰り返すそうです。
よって、スイングアームは製作完了した時点ではまだ本来の強度に戻っておらず、少し時間が必要になります。
よって、ご購入後直ぐに取り付けを行いたいのは重々承知ですが、3〜4週間常温で放置した後使用を頂けるとこのアルミ合金本来の強度を100%発揮出来るかと思います。
上記をお守り頂き、インストールを行って頂けると非常に嬉しく思います。



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