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"FAST - SAFE - FUN"。

この3年間のEVプロジェクト回想録。

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現地時間11日、月曜の朝です。
今、当方はシアトル空港で乗り継ぎ便を待っています。
ボーディングまで1時間半あるので今回のコロラド・マイルについて記しておきたいと思います。

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ボンネビルを終えてソルトレイクシティ〜デンバーへと移動した”コロラド・マイル”チームは、今月2日にデンバー入り。
初めて参加するレースという事で勝手が分からず、デンバーに住むエヴァとビルさんを通じてケーシーさんやウッディさんを紹介して頂き、今回レース車両運搬+通訳として参加して頂いたヒノさんを通して、なんとかエントリーに漕ぎ着けました。

当日はケーシーさんが駆けつけてくれ、もっとも懸念されていたスタート地点への侵入方法、EV-01Zは極々低速で直角に曲がる事が出来ない為、”ストレートラインナップ”の依頼を行いました。
レースが始まってみてから気がつきましたが、トップフューエルのドラッグレーサーや本格的なランドスピードレーサーもエントリーしており、自ら曲がる事が困難な車両は当方以外にも少なからず参加しており、心配は無用でした。

コースのリターンロードへのアクセスも航空写真で見ていたより思いのほか広く、コースに立てられたコーン外側まではみ出てターンする事でEV-01Zでも十二分にコースを周回出来る事も確認。

実際走ってみると、国内でテストしていた城里よりはコースは荒れていますが、単純に城里の倍程の距離があるし、コース外の見晴らしが良く開放的なので実際のコース幅より広く感じ全く恐怖感はありませんでした。

他のバイクとは異なる容姿ですし、無音で走行するEV-01Zは客観的に見ると多分不思議な存在です。
ボンネビルでこそ何度か走らせていますが、マイルレースは初めてですし、そもそもこの”コロラド・マイル”に日本からエントリーした方が実際いるのかどうかすら分かりません。
最初は皆んな好奇の目で見てましたし、まぁ当方の小柄な容姿も手伝ってか(笑)東洋から来た訳の分からないチーム、という認識だったかもしれません。

しかし、塩の上では十分なパフォーマンスを発揮出来なかったEV-01Zですが、舗装路であれば何度もテストを繰り返しているので良いところも悪いところも分かっています。ただ速度域が未体験の領域に入る為、そこは未知数の部分がありましたが、走行データの習得に加え、”数字”を残す事が今回最大の目的でした。

念の為書いておきますが、当たり前ですが塩とアスファルトでは全く違います。
例えばソルトフラッツで200mph(320km/h)を出そうと思ったら、単純に330-340km/hを出せる車両のパフォーマンスが必要です。またサスペンションやシャシーについても刻々と変化する路面に合わせられないと勝てないのでアスファルトの何倍も難しいのがボンネビルです。だから単純に双方のレースを同じスタンスで考える事は出来ませんが、現在のバッテリー、モーター、車体の限界値を知る事が次の新たな車両開発に繋がる事は間違いありません。
当方個人のレースなら、”勝つ”か”負ける”か、白か黒しか無いのですが、モビテックさんは違います。
勿論勝てればベストなのですが、データを積み重ね、検証しながら着実に一歩一歩進む、という事が企業レベルでは絶対に必要な事なのだと思います。

そんな感じで始まったマイルレースですが、初日は4本走り確実に速度を伸ばしました。
2日目は更に速度を上げるべくバッテリーのパフォーマンスを引き上げ2本走行。結果300km/hの目標値を超える事が出来ましたが、毎回最高速度を上げていた分プレッシャーは大きく、チームのモチベーションの為にも1度でも速度を落とす訳にはいかないと感じました。

前記したように際どい瞬間もあった訳ですが、この大会に参加していたライダー、ドライバー、そしてスタッフらが毎回走る毎に賛辞をくれ励みになりました。
リターンロードを走っていて皆手を上げてくれる事も、自分のモチベーションを維持し、このレースだけは絶対に負けられない、という強い意志に繋がったと思います。

今までもずっと他のライダーや大会スタッフらに助けられ、励まされてきた事でレースを続けられてきたと思います。勿論結果は大事ですし、勝つ事で名前を覚えてもらえる、という事は多々ある訳ですが、当方が最も大事にしているのはレースを通じての人と人との繋がりです。

今回の”コロラド・マイル”でも、本当に多くの方に声をかけて頂き、コロラド・マイル以外のマイルレース、”テキサス・マイル”や”アーカンソー・マイル”にも来いよ、と多くの方々にお誘いを受けました。

まぁランボルギーニやポルシェでサンデーレースを楽しまれているセレブの方々もいたりして、ちょっとボンネビルとは異質なところもありますが、たった1マイルの距離で400km/h近い速度を叩き出すフルチューンのコルベットやマスタング、ハヤブサターボなど本気のカー&バイクガイもいて、また違った楽しさがあります。
お昼は完全にコースをシャットダウンするので皆んな思い思いにピットを回り、和気藹々としています。
コースも良かったですが、そこに集う人達もまた素晴らしい方が多く、アメリカのモータースポーツの懐の深さをまた思い知らされました。

まぁ良い事が多かったのですが、問題点もありました。
EV-01Z、結果を見ればボンネビルで200mphを目指すにはほど遠かったと思います。

バッテリーのパワーは勿論ですが、車体の剛性やサスセッティングの柔軟性、なによりずっと感じて来た車体の安定感の無さやスロットルを抜いた時の挙動の変化など、ネガティブな部分も多かったと思います。

オートバイは感性の乗り物。レース専用車両なので誰でも乗れるように、とは言いませんが、どんな状況下においても”楽しめる車両”こそが、走らせても”速い車両”であるといつも感じます。

以前から言ってますが、当方の赤いレーサーは速さこそまだまだ足りてませんが、乗ってて本当に楽しめます。
塩の上でも全く不安感は無く自分の体の一部のように動いてくれます。
走り、曲がり、止まる。全てが同レベルにバランスされており、サスやシャシーはエンジンに負けてません。
そんな風に車両が仕上がれば、EV-01は必ずや世界最速のエレクトリックバイクになれる日が来ると当方は信じています。

2日目、ボンネビルで助けて頂いたオーストラリアのチーム、”ブラックアートレーシング”の面々もコロラド入りして来られました。その時に聞いた言葉がレースの全てを語っていると思います。

"FAST - SAFE - FUN"(速く。安全に。楽しく。)

正にこの言葉通り。
とてつもなく速いベテランチームの面々がおっしゃる言葉なのでとても胸に響いた次第です。

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最後となりますが、3年間EV-01のライディングをお任せ頂き、”ボンネビル・モーターサイクル・スピードトライアル”、”マイククック・ランドスピード・シュートアウト”、そして今回の”コロラド・マイル”への参加をさせて頂いたモビテック様には感謝のしようがありません。
普段は”一国一城の主人”的な立ち位置で仕事をしている為あまり気にしていませんでしたが、”チーム”として目標に当たる事のなんたるかをこの歳で今更ながら学んだ気がします。

明日から当方はいつものように内燃機の仕事に戻りますが、いつかまた、機会があれば是非エレクトリックバイクで皆様と一緒にボンネビルへ戻る日が来ることを願うばかりです。

それでは当方は一足早く帰国の途につきます。
皆様、有難う御座いました。


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