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今年のボンネビルを終えて。

毎年恒例、ボンネビルの覚え書きです。
乱筆乱文、加えて長文も失礼。


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Photo @ TERU.


今回は当方個人としては連続8度目、モビテック様のEVバイクプロジェクトに関わって3度目のボンネビルでした。

EV-01Zは去年の結果を踏まえ、モーター位置の変更、それに従うバッテリーセルの削減、クラッチシステムやトラクションコントロールなどの機能追加が行われました。

車両、体調共に万全の体制で臨んだボンネビルでしたが、今年はコースが1本のみの設定で、事前にコース条件は良いと聞いていたものの、実際は酷い凸凹のウォッシュボード。コースはショート、インターミディ、ロングの3設定でした。

しかしながら、ボンネビルは自然が相手のレースです。コースコンディションも日々、というより時間で刻々と変化しますし、4、5時間の待ち時間は当たり前、レースに参加し始めた最初の頃は避難するクルマも無く、バイクの横でひたすら何時間も待った事もあるので慣れています。
歳のせいか暑さだけは相当に堪えましたが、待機するクルマの中でエアコンをONにして待つ事が出来、待ち時間の間はほとんど苦にはなりませんでした。

そんな感じで始まった今年のボンネビルですが、V.I.R.でピットは事前セット、テックインスペクションも一発合格と全てがスムーズにスタート。
幸先が良いな、と思っていたのですが、実際コースに出るとバンピーで車体がバンバン跳ねてスロットルが開けられないし、カウルに伏せると振動で全く前が見えません。

今年のコースではタイヤの空気圧でもかなり走行が変わる印象が強く、Buell Brothersの”サンタクロース”アンダーソンさんからもタイヤの空気圧は時間と天気で細かく変えていけ、との助言を頂いていたので、コンマ2レベルの微細な調整を行いました。

1日1〜2本の走行という少ないアタックの中で、乗り方を変えフロントサスペンションのセッティングを変え、いろいろ試した結果はEV-01ZにセットしてあるFサスでは硬過ぎるという判断。

通常フラットな路面の時はプリロードやイニシャルを上げていく方向に調整する事でハイスピードでのフロントからのヨーイングを避ける事が出来ます。
当方の場合、なるべくセルフステアを効かせて自然な感じで乗る事が好みの為、サスは締める方向で調整して、代わりにステアリングダンパーは弱目で走ります。
体格があり腕力もあるライダーなら力である程度ねじ伏せられますが(ボンネビルはコーナリングする訳ではないので)、当方の場合は無理なので、サスのセッティングは他のライダー以上に気を使います。

EV-01Zは車重がある為特注したスプリングを使っており、当然ダンピングもそれに見合うものに改造しています。
通常Fスプリングのレートは0.8-0.9kが一般的なのですが(よほど体重のある車両とライダーの組み合わせでのみ1.0k〜)、今回使っていたスプリングは2.2kという尋常ではないレート。

リアがハードテイルなのも振動を吸収出来ない要因のひとつにはなっていましたが、他のリジットフレーム車両が普通に走っている事を考えると、屈強な車体剛性(これはモビテック様がPCでシュミレーションしているので間違いない)が今回のコースでは仇となっており、適度なネジレの無い車体は、風で車両が流された時の挙動がソリッドで、かなりヒヤリとさせられました。
前後リジット状態なので前後輪共に跳ね、おかげでタイヤはグリップせずどこからでもスリップダウンしそうになります。
速度は240-250km/h前後とそうも速くはないのですが、その速度域でフッとフロントタイヤが自然に抜けると生きた心地はしません。

Fサスペンションを交換するしか方法は無いという事で他のピットを回り、オーストラリアから来ていた"BLACK ART RACING"の'96y GSX-R750ターボからサス一式を借りました。
装着してみた結果は良好だったのですが、彼らからユタにGSX-Rのスペシャルショップがあるとの情報を伺いました。
連絡してみるとハヤブサのストックサスは何本もある、という事だった為、急遽クルマを走らせ往復4時間程で中古サスを入手、今年もモーテル駐車場でモビテックさんが交換。

翌日からはハヤブサのストックサスペンションでサスセッティングをやり直す事となりました。

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EV-01Zにハヤブサ・ストックサスペンションという組み合わせは試した事がなかった為、まずは最弱と最強で2本走行。
路面の凹凸を舐めるように走り、ギャップでなるべく跳ねないサスのセッティングと組み合わせるタイヤの空気圧がほぼ分かりました。

タイミングよく1日3本走れた4日目が今回最もフィールが良く、今までよりはスロットルを開ける事が出来たのですが、スロットル開度に対して何故か車速が伸びません。

走行後のデータをチェックしてもらうとバッテリーの電流制限上限まで使ってしまっているらしく、スタート後約1.5マイルで最高速に達し、その後はその速度をほぼ維持しているだけの状態だと言います。
通常ピストンエンジンの場合は最大トルクや最大パワーが高回転域で発生しますが、モーターの場合は初期の段階で最大トルクが発生する為、後半はなだらかにパワーやトルクカーブが落ちます。
まだパワーがドロップする域には達していませんでしたが、丁度コースコンディションが良い計測区間出口付近での立ち上がりで車速の伸びが欲しかったので、バッテリーの電流制御を解放して頂く事となりました。

今まではバッテリー最大出力の75%あたりでずっと走らせていましたが、98%まで解放、約20%の出力アップに変更。
じゃ最初から解放すれば良いんじゃないかと思われがちですが、電圧を上げる事によりボンネビルでどれだけ熱が上がるかのデータがありません。最悪出火という事も無きにしもあらず、という事ですので慎重に判断しないといけません。

当方は車両に上手く乗るだけですので、そういったバッテリーやモーターのマネージメントは一切理解出来ていません。
ただ車体の状況を逐一報告し、良い方向にもっていく事が”仕事”ですから、転けずにコースから戻る事が最優先となります。

最終日も結局4時間半待たされ、オンコース出来たのはもう昼近く。
足回りとタイヤ空気圧はまずまず悪く無い筈だったので、あとは上手く電圧の上がった車体をコントロールできるかどうかにかかっています。

出力が上がっているのでスタート時のスロットルワークが更に難しく、速度が上がる事を想定して当方にしては硬めのステアリングダンパーセッティングでスタートした事もあり、低速で車体がユラユラ揺れます。
ただ速度が遅いので最悪でも転けるだけで済みますが、なんとか体制を立て直す事が出来て無事コースイン。

スロットルを開けた感じは明らかにパワフルで、車速の伸びは良いように感じます。
これなら速度を乗せられる、と車体に伏せようとしますが、前日溶剤で曇らせてしまったウインドシールド越しが全く前方が見えず。仕方ないのでカウルの右横から顔を出して前方を見ながら走行するカタチになりました。

少し車速を落として計測区間に侵入、そこからスロットルを開けました。
するとパワーでリアが滑り出し、スロットルを閉じるとまたグリップが回復、そこから開けていくと今度はギャップでフロントが流れ出すといった有様で、パワーに対してタイヤが路面追従が出来ず、結局スロットルは開けられません。
記録はまたもや240km/h台に終始し、ローパワーでマイルドに走る、もしくはもう少ししなやかな車体でしか今回のコースを克服する事は不可能だと感じました。

最終日は15時コースクローズだったので午後からもう一本行ける感じはありましたが、もうこれ以上詰めても仕方が無い、と思えましたし、体力も消耗しており咄嗟の判断力も低下しているとの判断で、此れを以って今回のアタックを終える事にしました。

当然モビテックのスタッフさんも、当方も相当落胆致しましたが、車両を壊さず、当方も怪我をせず、且つ大会運営にも何も支障は来たさない、結果としては当然全く納得の出来るものでは無かったですが、それ以外は妥当であったと思います。

8年走ってきて、ここまで酷いコースは初めてでした。
概ね感じた事は車体の完成度が高い車両、ベテランと呼ばれる方の多くが速度が例年並みに出ていなかったように思います。
勿論例外はあり、どんな条件でも絶えず記録を出す方はおられます。そこは強運とコース条件を諸共しない素晴らしい実力を備えていたのだと思います。

なお、キットらは勿論の事、何のメリットも無いのに手弁当で駆けつけ、終始当方をサポートしてくれた岩崎さんとテルには本当に感謝しています。有難う。

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そんなカタチで今年のボンネビルは終わりました。

今こうしてモーテル6の部屋でPCに向かっておりますが、ほとんどのレーサーは家路に向かっており、ほぼ誰も居なくなったウェンドーバーの街は寂しい感じがします。

今回初めてバッテリー制御を解放してみて、車両にはまだ余力が残っている事を感じます。
どの道3年使ったバッテリーはもう駄目になってしまうみたいですので、バッテリーの残りの寿命を使い切る為にも、当方らはこの地に残り、これから”コロラドマイル”に挑みます。

滑走路を使っての舗装路コースで、1マイル加速区間+1/2マイル減速区間という非常に短い距離なので、何処まで伸ばせるのかは分かりません。しかしやるだけやってみるつもりです。


ボンネビルは残念な結果に終わりましたが、まだ当方の”仕事”は残っています。

レースまで数日空きますが、引き続き頑張りますので宜しくお願い致します。


※当店に作業をご依頼のお客様には多大なご迷惑をお掛けする事になりますが、何卒ご理解、ご協力をお願い致します。
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