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MARUMASU Motorcycle Lounge

2006 - 2023 Specializes in Harley-Davidson / Japanese Classics Maintenance & Speed Pro Shop " The Spirit of Bonneville Salt Flats" Land Speed Racing. / 2010/2011 FIM World Speed Record : 2011/2014 AMA National Champion : 2017 Fastest EV Motorcycle in Colorado Mile Race.

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転倒時動画。

モビテックさんがスマホで撮影してた動画です。



忘れないうちに覚え書きとしておきます。

レース開始1日目。

今年のボンネビルは好天が続いており、日差しは厳しくライダーには辛い状況。
そこで今年はトラックに牽引したカーゴに単車を積み込んでピット〜プレステージエリア〜スタート地点を移動する事に。
一本目はマウンテン・ショートコース。
スタート地点まで車で移動し、まずは現地のボランティアスタッフにEV-01Aが低速で曲がるという事が難しい車両だという事を説明し、コースインに際してなるべく真っ直ぐな位置からスタート出来るようリクエスト。

車両をカーゴから降ろしコースに対して少し左側の位置にストップ。最初スタンドアップした場所は塩の起伏があり安定性に欠けていた為、少し移動させて停めた。スタートラインからは20〜30mの距離だと思われた。

待ち時間は非常に短く、あっと言う間に順番が来てヘルメットとグローブを装着。
車体に装着したカメラ、GPSスピードメーター、操作系のランプをチェック。
車両に跨りスタッフにリアスタンドを外してもらい、電源ON、ブルーのランプが点灯し動力が入った事を確認。
一度メインスイッチをOFFにしてボランティアスタッフの指示を仰ぐこと数秒。

スタートOKの合図が出たのでスタートボタンON。ヘルメットのシールドを閉じる。
ブルーのLEDランプが点灯し、いつものようにブレーキを握ったままほんの一瞬スロットルを捻り、車体が前に動こうとするのを確認。

アスファルトと異なり塩は非常に滑りやすい為細心の注意を払いブレーキリリース、そして本当にゆっくりとスロットルを少し開けると車体が前に出た。
スタートラインに対して斜めに車体を止めていた為、ハンドルを少し左に切ってスタート。するといきなりリアが流れた。
しかし、いつも自分の車両では1速、2速はドリフトアングルのままでも気にせず加速するのが常なので特に焦りもなし。

ある程度滑る事は予想していたのでいつものようにカウンターを当てたが、全くリアタイヤがグリップせずそのまま揺り替えされて車体はスネーキング。
この時点でスロットルはOFFだったと思うのだが、パワーが落ちてリアタイヤがグリップ力を回復した瞬間にハイサイドで身体ごと吹っ飛ばされた。

身体が地面に落ちた瞬間後頭部にショックがあり、数回転がった気がした。それと同時に後ろで車両が落ちる音が聞こえた。
あとからテルに聞いたところ車体は一旦空中まで舞い上がり、回転するカタチで落下した様子。
ほとんど歩くようなスピードしか出ていなかったし、370kg以上ある車体がたったあの速度で空中に放り投げられるとは夢にも思わないので、車体が身体の上に降ってこなかったのは不幸中の幸い。
車両はレーシングスーツに付けたエマージェンシー用のリーシュコードで電源がCUT OFFされていた。

身体の方は最初全く立ち上がれず。なんとか四つん這いまで自分で起きてみたがフラフラして全く平衡感覚が無い。
直ぐに救急車が駆けつけていろいろ質問される。人の手を借りればなんとか立ち上がる事ができたが自分自身の意志では立っていることもままならず。
しかし救急車にのる事もないと判断し、モビテックさんのトラックに乗り込んでピットまで戻る事にする。

ピットまでは10分弱だったと思うが、横になったシートから身体を起こせる気がしない。
軽い脳震盪だと思われたが少し吐き気と頭痛がするのでフクミちゃんに救急車を呼んできてもらうようお願いする。

直ぐに救急車は来て車両内で応急処置。血液を採られ心拍数などをチェック。
その間もフクミちゃんが通訳を行ってくれており、今回は本当に助けられた。

ソルトレイクシティまで搬送し、更に精密な検査も出来ると促されたが、検査をする間に落ち着いてきたので大丈夫だと告げ、車両の修理を開始していたスタッフさんらには申し訳なかったが一旦モーテルへ戻る事にする。

小一時間ベットで横になり少し眠った気もした。少し食欲はあったのでカップ麺を食べる。

しかし、車両の破損状況や、何より気になったのはどれくらいのスロットル開度であのような状況になったのか、また転倒する瞬間にスロットルを開けてしまっていたのではないかという事。
少し身体はふわふわした感じはしたが、ピットに戻れると判断。
午後1時を少し過ぎたあたりでピットへと戻った。

モビテックさんにデータをチェックして頂いたところ、スロットル開度時間は0.5秒、スロットル開度は15%という事だった。また転倒時にスロットルは開いていなかった事も確認。

クラッチのような駆動を切り離す機能が無く、凄まじいトルクを制御する事が難しい為、塩の上での操作、特にスタート時のように微妙なスロットル操作が必要とされる状況下では特にコントロールが難しい。
加えてEV-01Aはその独自の設計故低速での走行は極めて難しく、速度を上げてしまわないと安定性が乏しいので更に難解。

スロットルを開けた時の出力特性を変える事は出来るのだが、決まった3パターンのみ。
スタート時の出力だけを極端に抑える事は出来ないとの事だった。

また、転倒時にリアの動力ケーブルカバーは転倒防止のスライダーごと破損してしまい、ケーブルの保護という面で安全性が保証出来ないという事でAMA/FIMインスペクターから改善要求を受けた為、そこもクリア出来ないとレースには参加できない。

動力ケーブルカバーの件はモビテックさんらにお任せするとして、出力特性を最も緩やかなものにまずは変更し、コースでは無く、ピット裏側の塩の状況が悪い場所を敢えて使ってもう一度スタートと低速走行が可能かどうかを判断するという方向に決定。

ただ比較的硬そうな塩の場所でも転倒時、タイヤのスピンで大きく塩が削れてしまっているのを確認している為(塩の上に車体のペイントが擦れて赤く残っているのを見たから、、最初は血かと思ったので転倒直後でも鮮明に記憶している)、高速走行時でも浮いているような状況のボンネビルではどれだけコースコンディションが良かったとしても、地面を削る程の出力が出れば危険だと思われる。

無理してコースに出て、仮に上手くスタート出来たとしても、計測地点通過後のターンアウトでまた転倒する事は必至。
何より他のレーサーに迷惑がかかる事は絶対に避けたい。

出来る限りの事は試し、その後の判断はモビテックさんに一任したいと思います。
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