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Specializes in Harley-Davidson V-TWIN Maintenance & Speed Pro Shop " The Spirit of Bonneville Salt Flats"

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Bonneville 2015.

気がつけば6年。あっと言う間の出来事でした。

DSC00412のコピー


"Bonneville Salt-Flats"。そこは100年に及ぶ幾多の伝説と記録が生まれたスピードの聖地です。

何の情報も得ず、何も分からないままに、ただ勢いだけで飛び出したのが2010年の初戦でした。

知っての通り、それまで街で走らせていた自分の車両を改造して参加した訳ですが、これまでの人生で塩の上を走るという経験は当然ありませんでしたので、なにもかもが想像の世界。エンジン仕様、フレーム剛性、ファイナルやタイヤのチョイスなど、全てが手探りの状態でした。

何も分からない初参加の日本人には正直風当たりはキツかったのですが、それでもこちらの意図を汲んでくれたレーサーやスタッフも少なからずいて、彼らには本当に助けられました。その結果が2010年のFIMワールドレコードであり、翌年2011年のFIMワールドレコード・AMAナショナルチャンピオンのダブルタイトルに繋がったという事は間違いないと断言出来ます。

2012〜2013年は思ったように車両が仕上がらず、上手くレースを進める事が出来ずに2年連続での敗北。毎年レコードを出せるほど甘くはない世界ではありますが、一年の稼ぎを全て突っ込むような無茶苦茶な資金繰りでのレース活動ですから、そのショックはとても大きかったです。

しかし、一度あの世界を知ればもう後戻りも出来ず、”負け”が重なるほどボンネビルに戻る、という意思は頑なになるばかりで、去年は車両の改良も最低限、エンジンの仕様については金銭的に厳しかった為に2013年仕様のまま組み直す事も出来ず。。それでも行きたかったので自家用車を売り払い、その上借金まで作って出場したのが2014年でした。

悪天候に左右され、なかなかコースコンディションがクリアにならず皆苦労していましたが、当方の車両は以前から考えていたラムエアシステムが効果を発揮し、ベテランの強豪チームが同クラスに居たにも関わらず、2年ぶりに”AMAナショナルチャンピオン”の座を奪取する事に成功しました。
レース終了後のパーティでは、その年の最も素晴らしい車両に与えられるサプライズも初めてお受けする事ができ、5年かかって、ようやくこのレースの”仲間”として少しだけ皆んなに認められたのではないかと思いました。

そして今年、2015年。

縁あってモビテック様のEVバイクプロジェクトに開発支援アドバイザー+ライダーとして契約させて頂きました。当方にとっては6度目のボンネビルです。

自動車関連の製品開発で培ってきた技術的資産を使って、自分達の技術力を具現化して世界に挑戦する、という事で始まったこのプロジェクト、去年現地視察にこそお見えになりましたが、最高速に特化したEV車両設計は初めての試みです。

設計、解析、改良は仕事柄練れておられる訳ですが、一筋縄でいかないのがボンネビルですし、その目標設定スピードのハードルはとても高く、目標値をクリアすべく与えられたコンポーネンツによって、通常ではあまり考えられない車体レイアウトとなっています。

開発段階で何度か定期的なディスカッションを繰り返し、その工程を見聞きしてきたつもりでいましたが、実際にカタチとなって出来上がってくると、その特異性には正直良くも悪くも異質な感じを覚えました。

一度だけ行った城里テストコースでのテスト走行ではパフォーマンスが100%発揮される状態ではなかったですし、何より1500m程度の直線距離では思ったような速度まで出す事が困難故、非常に判断が難しいところではあるのですが、見た目の特異性と同様に、その走りも全く異次元のものでした。

オートバイとは「似て非なるもの」。それが当方の第一印象でした。

乗れば分かるのですが、レシプロエンジンでいうところのフライホイールのような”回転マス”が車体には皆無で、左右にセットされたツインモーターはリアのアクスルシャフト同軸上にある為、回転していてもジャイロ効果があまり発生していないように感じました。
通常オートバイはスロットルを開ければ自ずと直立してまっすぐ走ろうとしますが、EV-01にはその動きが全くありませんでしたし、少し車体が傾いたままスタートしてしまうとライダーが意図的に車体を起こしてあげない限り、車体は傾いたまま加速するといった感じです。

しかし、EVならではの良い面もあります。

毎回苦労するファイナルの選定や、シフトアップ時におけるエンジン回転のドロップはモーターですので一切ありません。シフトタイミングのミスによる失速はあり得ないという事です。
また、複数搭載したリチウムイオンバッテリーと、リアホイールを直接駆動するツインモーターにより発生するパワーは馬力換算にして後軸300ps以上、計算上での最高速度は380km/h程出るという事ですので、毎年自らの車両で感じる、パワー不足で空気抵抗に負けてしまう、という事はあまり無いのではないかと思います。
ご存知のように空気抵抗は”速度の二乗”で増幅されていきますので、時速300km/h以上になれば巨大な力で車体を抑え込もうとします。そんな時、絶対的な最高出力こそが極めて重要な意味を持つと思います。

現在までのEVバイクでの世界記録は348km/h。
シットダウンタイプ、つまりライダーがバイクに”跨った”状態の車両での世界最高速度記録です。

この記録を破れば、EVバイクでは問答無用の世界一となります。

これまでの世界記録を破るべく、モビテックさんは多くの人材と資金を投入しプロジェクトを押し推めていらしたのだと思いますし、その結果に少しでも近づける為ベストを尽くす事が当方に課せられた今回の使命です。

また、これは個人的な理由になってしまいますが、自然吸気のOHVエンジン+ノーマルガスクラスともなれば過給器を付けたところで400km/h近いスピードをシットダウンタイプの車両で出す事は実際厳しいと思います。水冷4気筒DOHCエンジンベースの過給器付きクラスともなればハナシはまた別ですが、そもそも自分自身ではハーレーエンジンベースでの参加しか考えおりませんので、350km/hや400km/hといった世界は、正直夢のまた夢の世界です。

今回、そこを狙えるだけのパワーがある車両に乗れるという事は幸運以外のなにものでもありませんし、ましてや個人ではなかなか手が出ないEV車両をドライブ出来る事は、ライダー冥利に尽きると言えます。

350km/hや400km/hといったスピード域で一歩間違えば、、という事を全く考えない訳ではありません。しかしながらどんなチャレンジでも、前人未到の記録に挑戦するという事は=リスクに向かい合う事だと思います。困難を避けて通るようでは何事も次に進む事は出来ません。
実際に”命を賭ける”に値する挑戦こそが、当方が最も”欲するもの”以外のなにものでもありませんし、だからこそ勝ち取るに価する栄誉なのだと思います。

とはいえ、レースは”時の運”もありますので勝ち負けは実際のところ誰にも分かりません。
些細なトラブルで走行不能になる事もあれば、ボンネビルでは天候にも左右される為、悪天候でクローズになる事も多々考えられます。

当方独りががいくら頑張ってみたところで出来うる事はたかだか知れています。ですが、モビテックさんや関係各社の方々が一丸となって造り上げたこの”EV-01”で、レーシングスーツの背中に縫われた「日の丸」に恥じないような走りとなるよう最大限の努力を致します。日本人としての”誇り”にかけて。


とはいえ、あまり気負う事無く楽しめれば、と思います。

日本からの応援、宜しくお願い致します。
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