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MARUMASU Motorcycle Lounge

2006 - 2023 Specializes in Harley-Davidson / Japanese Classics Maintenance & Speed Pro Shop " The Spirit of Bonneville Salt Flats" Land Speed Racing. / 2010/2011 FIM World Speed Record : 2011/2014 AMA National Champion : 2017 Fastest EV Motorcycle in Colorado Mile Race.

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プリモ・プロクラッチ豆知識。

今回はTIPSをひとつ。

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先日の記事で当方がFXBに装着しているプリモのベルトドライブユニットのプロクラッチ・ハブベアリングが逝った、という事を記載しました。文中に「乗っていて違和感が無かった」と書いたのですが、昨日晩飯を食べながらボンヤリ考えていて、そういえば少し前から少し気になる症状が出ていた事に気が付きました。今回はそれについて書いてみます。

少し前から何故かスターターの調子が悪く、バッテリーをフル充電してあるにも関わらずセルが飛び込んでも回らなかったり、キックバックしてスターターギアが弾かれたりという症状が出ていました。

最初、リチウムバッテリー特有の、最初期の始動時が最も電圧が弱く、スタート動作を繰り返すうちに活性化して電圧が上がる、という特性のせいなのかと考えていました。秋に松本まで往復したましたが、その時は全く問題無かったですし、寒くなってから症状が出だしたような気がします。
しかし、それでもなんとかエンジンに火が入り、一度でもエンジンが温まってしまうと同じ症状を再現する事は難しく、何度エンジンを再始動してみても極々普通に一発で火が入ります。原因はバッテリーでは無いようです。

次に疑ったのはセルスターターのギアユニット。ショベルヘッドは知ってのとおりスターター自体のギアに始まり、中間に位置する伝達ギアを介してスターターのワンウェイに繋がる、という無駄に複雑な構造になっています。そのうえFXBの場合、1次と2次が共にベルトドライブの為、一般的なチェーンでドライブするFXSローライダーに比べ、構造的、形状的にかなり無理がある構造になってしまっています。
その構造故、以前スターターシャフトにトラブルが出ま訳ですが、今回この辺りの不具合も考えました。しかし、エンジンやプライマリー(というより正確にはクラッチバスケットだった訳ですが)が温まるとトラブルが無くなるので、スターターのトラブルとは考え難い訳です。
今回電装系統を32A化するにあたりタイミング良く全てを分解しチェックを行いましたが、何処にも問題は無く、スターター回りのトラブルでは無い事が分かりました。

で、今回。

クラッチハブのメインベアリングが逝っていた訳ですが、エンジンの掛かりが悪かったのはこのベアリングが原因だと思われます。クラッチシェルにハブだけを装着しておき(つまりクラッチやフリクションプレートを外してハブをフリーにする)、手で回してみるとゴリゴリとした違和感がありますし、一か所引っ掛かるような感じのところがありました。

セルスタート時、スターターのワンウェイギアが飛び込んで、クラッチシェルに固定されたスターターリングギアを介して1次ドライブが回転し、クランクを回してエンジンに火が入ります。

本来クラッチバスケットは手でクルクルと軽く回らなければなりませんが、クラッチシェルのメインベアリングが逝っていれば回転は重く、上手くスターターが飛び込んでもクラッチシェルが回らなければエンジンは始動出来ませんし、ワンウェイは弾かれてしまいます。それでもスターターボタンを長押ししていれば、ソレノイドから煙が出たり、最悪ワンウェイが逝っていたと思います。

リチウムバッテリーの場合、クランキングパワーが鉛バッテリーに比べると圧倒的に強い為、無駄な長押しは一撃でワンウェイを壊したり、バッテリーターミナルを溶かす事もあります。運よくサーキットブレイカーが飛んでくれれば良いのですが、ショベルヘッドの場合、中途半端にワンウェイギアがスターターリングギアに噛み込んで戻らないと他の部分がダメージを受ける事も多々有ります。

そこで当方は、リチウムバッテリーでの始動の場合、瞬間的にスタートボタンを押すだけに留めます。
それを数秒毎に繰り返せば、必ずエンジンは始動出来ます。長くクランキングしなければエンジンが掛からないようなものは、点火時期やキャブレターのセッティング等、他に原因がある場合がほとんどだと思います。

普通に考えて、1次と2次がベルトドライブの場合、チェーンの車両に比べれば負荷は少なく、クラッチハブに掛かる力は少なくなると考えます。しかし、このプリモのクラッチハブ・メインベアリングが逝ったというハナシはちょくちょく聞きますし、プリモの純正以外で該当する同サイズのベアリングも無い為、このベアリングを使うほかありません。
という事はこのベアリング自体の耐久性が低く、使い方にもよるとは思いますが、数年に一度はチェック、及び交換を必要とする部品だと言えます。ベアリングは大きさの割には比較的安価ですので、早めに交換する事がベストではないかと思います。

なお、エンジンが温まった時に始動し易くなるのは単純にエンジン単体の始動性が上がっているだけなのか、それともクラッチバスケット自体も熱を帯びますので、熱膨張でベアリング内部にクリアランスが生まれ、ちょっと壊れていても回転が良くなり、エンジンが掛かってしまうのかもしれません。
そう考えるとオープンプライマリーよりも熱的に酷しいインナーベルトドライブの方が、このハブベアリングのトラブルが起こり易いのかもしれません。当店にはオープンプライマリーの車両が無いので検証する事は出来ませんが。。

プリモのプロクラッチは素晴らしく、特にショベルヘッドまでの古い車両で一度でも使ってしまうと、もう純正には戻れません。そんな便利なプロクラッチですが、クラッチのキレが今までに比べ難くなったり、上手く始動出来なくなった場合でもベアリングを一度疑ってみる価値はあると思います。
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