2014.08.18 Mon
5度目のボンネビル。
幼少の頃、児童雑誌か何かで見たロケット自動車、ブルーフレーム号(The Blue Flame)に憧れ、40代も半ばになってから映画「世界最速のインディアン」を観て、夢ではなく実際にボンネビル”塩の平原”に挑戦する決意が固まりました。
ボンネビルは、ユタ州のソルトレイクシティから西へ185kmにある約3万エーカーという広大な塩の平原が続く真っ白な大地で、半世紀以上にも及ぶ過去から現在に至るまで、年に一度、地上最速の男たちが集う聖地として知られています。
「世界最速のインディアン」の劇中で、アンソニー・ホプキンス演じる”バート・マンロー”が苦労の末ようやく辿り着いたボンネビル・ソルトフラッツに感極まり、歴代の名立たるランドスピードレーサーの名前と、彼らのマシンの名をボンネビル・スピードウェイの標識前で暗唱するシーンがあります。
当方も毎年ボンネビル・スピードウェイの看板の前に立ちますが、毎回このシーンがアタマに浮かび、目頭が熱くなります。
そんなスピードに魅せられた人間には”この世の楽園”でもあるボンネビルですが、海外でのレース活動には莫大な労力と費用が掛かります。
”最高速トライアル”というレース自体が国内では行えない為に日本での一般的な認知度は低く、FIM/AMA公認公式レースとはいえども海外だけで開催される競技ですから、ワールドレコードを穫っていても、国内で大手のスポンサーが付くことはまずありませんし、それは今年もなんら変わりません。
5年続けてきたレースですが、この2年間でレースでの借金を作ってしまい、稼いだ給料は全てレースに注ぎ込むのは当然として、それでも足りずに去年は自家用車を売り払ってまで渡米を行っており、レースの為に仕事をしている、という本末転倒な状況です。
ただし、勘違いして欲しくないのですが、この事に悲観的になっている訳ではありません。
そういったある種の”束縛”は更なる挑戦を震い立たせますし、何と言ったら良いのか分かりませんが、より研ぎ澄まされた精神力で目標に対峙出来る、と自分は考えています。
歴代の名立たる挑戦者達と自分も同じ、とは恐れ多くて言えませんが、その”挑戦する精神”を、自分でも少しばかりは持ち合わせているんじゃないかと思ってはいます。
歴史のある”聖なる場所”で、歴代の偉人達と同じコースを、自分の造ったレース車両で挑戦出来る事に毎年感謝の念を抱いています。
これには同業、異業種様々な方々のご協力によりレース用の車両が形成されており、それらの皆様の想いも乗せています。
特に自身で拘っているのは、”MADE IN JAPAN”の匠の技とそのクオリティーの高さで、溶接や塗装、整形といった直接的な技術力は勿論の事、ともすれば曖昧で、人間の五感に頼る車体回りのセットアップなどは、何処の国に持ち込んでも決して引けを取る事が無い、繊細な日本人特有の"唯一無比"のものだと自負しています。これまでご協力頂いてきた関係各位には、改めて感謝したいと思います。本当に有り難う御座いました。
当方独りでは、この5年間、参加は不可能でした。
皆様の想いに少しでも報えるよう、全身全霊を掛けて精進したいと思います。
悔い無きレースウィークを過ごせますように。
2014年8月18日
MARUMASU RACING 水谷カズトシ
| Bonneville Salt Flats | 02:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑